2022 年3月22日に、祇園の末吉町通から同じく、祇園の富永通へと移転リニューアルオープンしたバー「祇園 さが乃」。オーナーの相根章宏さんは、18年前から一軒家で、2階にも客席があった広めのバーで勤めてきました。ところがコロナ禍の影響や、自分の目の届く範囲でサービスを提供したいという思いもあって、以前の店舗より小さめの物件をリノベーション。このたびのオープンとなりました。
新たな店舗となったのは、ビルの1階。ここは以前も飲食店だった物件で、活かせるところは活かし、予算は抑えながらも以前のお客様からも好評のリノベーションを叶えました。オーナーの相根さんに詳しくお話を伺います。
前編・後編の2回に分けてお届けします!
最初に内覧したとき
この物件でお店をするのは無理だと諦めていました。
——相根さんが移転を決めたきっかけは何だったのでしょう?
相根さん:
以前の店舗では、18年バーをやっていました。そこは元お茶屋建築で2階もあり、カウンター席だけではなく、個室も6つ、テーブル席も10と、たくさんのお客様に来ていただくことができました。ですが、コロナ禍の影響でお客様が減ったことや、私の目の届く広さでもう少しこぢんまりとお店をしたいと思い、移転を決めたのです。
今回新しく物件を探すにあたり、1階であることと、前の店舗からあまり離れたくないという思いもあり、祇園の同じようなエリアで探していました。
実はこの物件を初めて見たとき、バーになりそうな雰囲気が全然なくて、ここでお店を開くのは無理だと思ったんです。元々は中華料理店だったらしく、厨房など使える部分はあったのですが、私としてはここじゃないなぁと(笑)ただ、広さはちょうどよく、ビルの1階であること、また前の店から通りをはさんで1本北という立地はすごく気に入っていたんですが。
それでも、コトスタイルのスタッフの方と一緒に見に来た際に、「カウンターはここに設置したらどうですか?」とか、「こんな風にリノベーションできますよ」といろいろな提案してもらって、それならできそうだと思い最終的にここに決めました。今となっては、この物件をリノベーションして、移転できたことは本当に良かったなと思っています。
——どんな風にリノベーションできるか、プロの視点で提案してもらえるのはありがたいですね。
相根さん:
はい。私自身、内装工事に関しては素人ですし、まさか、想像していた以上にこんな良い感じにお店が変わるともイメージできなかったので、内覧して専門的なアドバイスをもらえたことはありがたかったですね。
——リノベーションに関しては、どのような希望があったのでしょうか。
相根さん:
なるべく前のお店の雰囲気をそのまま再現したかったので、まずは前の店の雰囲気を見てもらいました。和のテイストは残したいと思っていたのですが、ビルの一階でそれがどんな風にリノベーションできるかちょっと不安もありました。ですが、いざリニューアルオープンしてみたら、長く通ってくださっているお客様からも「こっちの店舗の方がいい」「落ち着くね」と言っていただき、うれしく思っています。
——Instagramで前の店舗の写真を拝見しましたが、カウンター席の雰囲気はそっくりだと思いました。やはりメインで立つことになるカウンター席には、思い入れがあったのでしょうか。
相根さん:
そうですね。このカウンターに使っている木材は、彦根まで行って自分で探してきたんです。この木の厚みと奥行がまさに理想的で、10tトラックで運んできてもらいました。お客様にはお店で心地よく過ごしてもらいたいので、カウンターの中にいるスタッフとの距離感もこだわって、近すぎず遠からず、本当にちょうどよい距離感が保てるようにと、少し奥行のあるこの板を選びました。
——そうだったんですね。バーはお酒をおいしく飲んで、ついつい長居してしまうところというイメージが強かったのですが、お酒がおいしいのはもちろん、空間自体にもすごく配慮してあるからこそ、この居心地の良さが生まれていたんですね。
相根さん:
そうですね。距離感だけではなく、お客様と目を合わせて対話をするときは、目線の高さがとても重要だったりします。お客様がスタッフを見下ろすこともなく、かといって見上げることもない、ちょうどいい高さ。お客様との距離感や視線がどう交わるかも、居心地の良さに大きく関係してくるんです。
——なるほど〜!バーの空間作りは奥が深いですね。次回は、さらに細かな内装のこだわりについてお話を伺います!
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