2020 年10月15日、西陣の住宅街の一角にオープンした自家焙煎珈琲のお店「Laughter」。お店を立ち上げたのは、株式会社アカイノロシ代表取締役・矢野龍平さんと取締役・三輪浩朔さんのお2人。
コロナウィルスの影響で一度は決まっていた物件を諦め、店舗作りについて再びゼロから考え直し、今回のオープンに至ったそう。コロナ禍で出店を断念する人も多いであろうこの時期に、なぜ出店を諦めることなく貫いたのか? またウィズコロナ時代の店舗経営についても、矢野さんと三輪さんに詳しくお話を伺いました。
前編・後編の2回に分けてお届けします!
——————
コロナ禍時代の店舗運営を考え
街中ではなく、あえて住宅街に出店
——物件探しは、いつから始められたのですか?
矢野さん:
1年くらい前から実店舗を持ちたいと考え、ずっと物件は探していたんです。私は2年前、大学4年の秋にタイの少数民族アカ族が作るコーヒー豆を販売する会社「アカイノロシ」を設立しました。物件探しについては、当初からコトスタイルさんに協力してもらって、気になった物件は見てまわり、実は今年の3月にはすでに別の場所で物件が決まっていました。でも、そこはコロナ禍以前に、人の出入りがあることを想定して決めていたので、コロナウィルスの感染拡大のこともあり、その場所で出店することをいったん白紙にすることにしたんです。
起業してからのこの2年は、飲食店やカフェなどに焙煎したコーヒー豆を卸すほか、オンラインショップで販売したり、週末に開催されるイベント等に出店したりしてコーヒー豆を届けていました。でも、すべては間接的で、つまり私たちが直接お客様にコーヒー豆を販売する場面はほとんどなかったんです。ですがコロナ禍の影響でイベントは取りやめとなり、カフェへの卸も減ったりすると、私たちの販売経路がほとんど断たれてしまうという危機感がありました。その際に、直接お客様とやりとりすることの大切さを痛感しました。
とはいえ、世間はコロナ禍でお店に足を運ぶ人は減っている。ただ、街中にあるカフェは人が減って寂しい印象もありましたが、一方で外へ出なくなった分、お家時間を過ごすことが多くなり、コーヒー豆を購入して自宅で楽しむ人は増えていました。お店でも小売りをメインにすれば、可能性は広がるのではないかと考えたのです。
また繁華街にある飲食店の客数は大幅に減っていましたが、町へ出なくなった分むしろ住宅街にあるお店にはお客さんが増えていることも分かりました。ならば、住宅街にコーヒー豆を購入できるお店を開けば、充分勝算があるのではと考えたのです。
今回の物件は店舗としてはもちろん、会社の事務所やコーヒー豆を置くための倉庫、豆の焙煎所、ショールームも兼ねた場所としても考えています。場所を一つに集約することで、家賃は低く抑えられますし、効率的です。
希望物件としては、京都によくある、間口が狭く奥行きがある物件の場合、お客さんが入りにくい印象もあり、外からも中がよく見える物件を探していました。この物件は、ネットで見かけた新メディアで紹介されていたのを見つけて内覧を依頼。住宅街という立地の面でも物件としても、私たちが希望していたものとほぼ合致。内覧してその場でここだ!と決めました。それまで1年くらいかけて散々物件を探していたのに、見つかるときはすぐなんだなと(笑)
実は3月に決めていた物件は、今の家賃の2.5倍していたんです(笑)そういう意味でも、いったん白紙にして考え直すことができたのは、とても良かったなと思っています。
——ここは、コーヒー豆を販売する店舗としてだけではなく、焙煎したり、倉庫も兼ねていたりと、いろんなことに活用できる物件として選んだのですね。
矢野さん:
そうなんです。なので、物件を探すときの条件としては、豆を焙煎できる場所であることも重要でした。焙煎すると匂いや煙が気になる方もいると思うので、近隣に住んでいる方に迷惑をかけることのないよう、焙煎機にはエアクリーナーを付けています。本当は煙突の場所も今みたいに入り組んだ配管ではなく、まっすぐにしたかったのですが…。エアクリーナーのおかげで煙はほとんど出ることはありませんが、煙の風向きや建物の位置も配慮して、すぐ横ある公園に向けて煙突をつけてもらっています。
——隣りに、小さな公園があるのもいいですね。
ええ。内覧にきたとき、すぐ横に公園があるのもいいなと思いました。この店舗は単にカフェとしてコーヒーを飲んでもらうというよりは、気軽に寄ってテイクアウトして楽しんでもらえるようにと考え、席数は8席と多くはありません。
万が一店内が満席になっても、横に公園があるとテイクアウトして公園で過ごしていただけますし、この立地は本当に最適だなと思いました。特に今、秋という季節もちょうどよく、購入して公園に移動する方も多くいます。
——公園のベンチがまるでテラス席のようですね(笑)
今回はコロナ禍での店舗出店について伺いました。これからお店をスタートしたいと考えている方にも参考になったのではないでしょうか。後編では、店舗のリノベーションやオープン後の集客について伺っていきます!