2020 年10月15日、西陣にオープンした自家焙煎珈琲のお店「Laughter」。前回のインタビューでは一度決まっていた物件を諦め、違う物件で再出発を果たしたお話を伺いました。今回はウィズコロナ時代の店舗運営や集客という課題、さらにこだわりのコーヒー豆についても伺っていきます。
——新型コロナウィルスの感染者が再び増えてきており、世間では不安も広がっています。新店舗オープンに向けて不安はなかったのでしょうか。
矢野さん:
人が街中に出なくなった分、住宅街にあるお店にお客さんが増えていること、小売り店に関して売上はむしろ順調なことが分かっていたので、それほど不安はありませんでした。皆さん繁華街に行くのは抵抗があっても、近所の店に行くことにそれほど抵抗を感じていないように思います。
店舗の奥は元々あったお風呂場をとっぱらって、コーヒー豆の倉庫にしています。生豆は湿気を嫌うので、対策として店舗奥の天井にも換気扇を設置。結果として入口側と店舗奥と2つの換気扇を設置することになり、入口も開け放せばもう換気対策はばっちりです(笑)
リノベーションをお願いしたコトスタイルスタッフの古谷さんとは1年近くお付き合いがあり、こちらの希望するイメージもすごくよく理解してくれていました。フットワーク軽く、相談したらすぐに対応してもらえることもありがたかったですね。
——お店の入り口はガラス戸で、店舗の中がよく見えるのもいいですね。
矢野さん:
ありがとうございます。お店としては、お客さまが大勢来ても密な空間にならないように、入口は全開できるように、加えて中もよく見えるようにガラス戸にしてもらいました。どんなお店なのか、入る前に店内が見えた方が私自身いいなと思っていて。きっとお客さまもその方が安心ですよね。あと、道行く人とお店の人の目が合わないように、カウンターもあえて真正面に置かず、横に配置しました。店の中の人と目が合っちゃうと、入りにくくないですか?(笑) お店の人が横を向いてるくらいの方が気楽に入ってもらえると思って、この配置にしています。
——確かに、中の人に知られず店内を見てみたい気持ち、分かります。
オープン前にはどんな集客をされていたのですか?
矢野さん:
おそらく近所の人は、工事をしているときから「何がオープンするのかな」と興味津々で眺めてくれていたと思います。オープン前から気になっていたところが遂にオープンしたとなると、近所を噂が駆け巡ったようで、近くに住むいろいろな方が来てくれました。あるお母さんがコーヒーをテイクアウトして運動会に行かれて、そこで「お店オープンしてたよ」と言ってくれたみたいで、「聞いたよ〜」と駆けつけてくれた方も大勢いました。なんか運動会で近所の方に一気に知れ渡ったようで、うれしかったですね(笑)この西陣というエリアがまだ下町の風情が残るコミュニティが顕在のようで、そうした口コミの力はすごく感じています。昔からこの地域に住んでいるおばあちゃんが通りすがりに入ってきてくれたり、あとは近所に住む大学生や、小さなお子さんのいる若いファミリー層など、幅広い世代の方に来てもらっています。
オープンからまだ1ヵ月も経っていませんが、コーヒーチケットを買って週に2〜3回来てくれるおばあちゃんや、馴染みの常連さんも増えてきました。あとはオープン前からInstagramで情報を発信していたのでオープンを知って遠くからわざわざ来てくれた方がいたり。この時期にお店に足を運んでいただけるのは、本当にありがたいことだと思っています。
——お店は開店早々、順調のようですね!この座席数だと店内はすぐに満席になりそうですが。
矢野さん:
ありがとうございます。満席の場合は、すぐ横の公園のベンチもありますから(笑)でも、席数が少ないことで自然と知らない人同士が相席をしていて、お客さん同士がいつの間にか会話をしていたり、気が付いたら、常連のおじいさんの話をテーブルに座っていた若者全員が聞いていたりということもありました(笑)
また、テーブルの高さはそれぞれ違うのですが、若い方が年配の方に低い席を譲ったていたり。とても気持ちのいい空間、コミュニティができているような気がします。
このエリアにはゲストハウスも多く点在しているので、コロナウイルスの感染拡大が落ち着いたら、ゆくゆくはインバウンドの方にも来てもらえたらと思っています。今ここにいると、ほとんどコロナ禍の影響を感じることはありません。
——販売しているコーヒーの種類は、どのくらいあるのでしょうか。
三輪さん:
焙煎は私が担当しています。私たちのお店で扱っているのは、タイの少数民族アカ族が作っているコーヒー豆で、現在ブレンドが3種、シングルが5種の計8種のコーヒーを楽しんでいただけます。
——元々コーヒーがお好きだったんですか?
三輪さん:
お酒はよく飲んでいたんですが、実はこの事業を始めるまでコーヒーはほとんど飲んだことがなかったんです(笑)でもコーヒー豆の魅力、面白さに気が付いてからは、自家焙煎の老舗「アマノコーヒー」に3ヵ月通い続けて、焙煎のやり方を教わりました。そのときは知識として学ぶというより、毎日実際に8時間作業をさせてもらって、身体で覚えるという感覚でした。
基本の焙煎の仕方はみっちり学んだのですが、そのときの温度や湿度によって仕上がりが変わってくるので、環境や豆の状態もその都度変わり、焙煎には「これが正解」というものがありません。やればやるほど奥が深く、コーヒーの焙煎に興味が尽きません。自分のたてた仮説を実際に焙煎することで検証する。その繰り返しがたまらなく面白いですね。オタク気質の自分には、すごく合ってるなと思います(笑)
——オープンしてまもないですが、今後の展開についてはどのようにお考えですか?
矢野さん:
今、店舗の営業は昼間だけですが、年明けくらいから夜はバーを始めたいと考えています。夜だけ、バーをやりたいとう大学の後輩に場所貸しをする予定です。自分たちでスタッフを雇ってバーをするのは少なからずリスクがありますが、場所貸しという形ですと、使っていない夜も店舗を活用できていいなと。今は、コーヒーを使ったカクテル等、どんなお酒を出そうかと試作しているところです。街中にお酒を飲みに出ることはまだ難しいのかもしれませんが、家から歩いていってサクッと立ち寄れるバーがあれば、近所の方にも利用していただけるのではないかと思っています。夜なので、うるさくならないように配慮しつつ、夜のバー運営に向けて、これから準備を進めていきたいと思って今す。
——街中に出ることを躊躇する今こそ、近所に歩いていけるお店が求められているような気がしました。経営全般を担当する矢野さん、コーヒー焙煎を担当する三輪さん、さらにはバーを担当する後輩スタッフとチームワークの良さも、順調な運営のヒントになるような気がします。
今回は、貴重なお話をありがとうございました!