2019 年10月18日、御幸町通六角を南へ下がった場所にオープンした「Whisky Bar モルトストック」。白いウッドデッキのテラスの奥に、カウンターだけのこぢんまりとした心地のよさそうなバーがあり、すぐ隣には天井までお酒のボトルが並んだ小売店「Whisky House テラマチショウテン」があります。
オーナーの石榑寿志さんは、当初ここをお酒を販売する店舗と事務所にする予定だったと話します。しかしそれが「なぜかウィスキーが飲めるバーも始めることになったんです」と笑いながら教えてくれました。
なぜバーも始めることになったのか? 以前はお酒を卸す会社に勤めていたという石榑さんに、お店をオープンするまで、開店してからのお話を伺いました。前編・後編の2回に分けてご紹介します。
——————
物件に合わせて当初の予定を変更
BARを始めたら思わぬ人気店に!
——石榑さんはこの店をする前は、何をされていたのですか?
石榑さん:
元々お酒の卸をする会社に勤めていました。なので、独立してお店を始めるときも、お酒を販売する店舗と事務所の予定で物件を探していたんです。この物件は元々オーナーさんが美容室を経営されていた場所で、今は3つの空間に分かれていますが、当初は1つの大きな空間でした。今バーで使っているカウンターも元々ここにあったもので、内覧をした際は「デカイし、邪魔だなぁ」と思っていたんです(笑)。ところが物件を借りるときに、オーナーさんから「ぜひこのカウンターは残して使ってほしい」と言われてしまって…。最初は全然バーをすることなんて考えていなかったんですが、一晩考えてみて「アリかな」と、バーもすることに決めました。決めたのは、ノリですね(笑)
そのためコトスタイルさんには、内装についてもバーありきで図面を描いてもらって、当初の予定からはだいぶ変わりました。
——バーは元々予定にはなかったんですね!開店から3ヶ月が経ちますが、バーの評判はどうですか?
石榑さん:
おかげさまで、すごくいいですね(笑)今、世界的に日本産ウィスキーがブームになっていることもあり、昨年ラグビーワールドカップが開催されたときには、95%が海外のお客様でした。オーナーさんもここにバーがオープンしたことを喜んでくれていて、よくお店に顔を出してくれています。天井に付いているスピーカーやこの大きな冷蔵庫も、オーナーさんのご好意でそのまま使わせてもらっているんですよ。
——それはありがたいですね。内装工事の際は、コトスタイルにはどんなイメージを伝えたのでしょうか。
石榑さん:
前職のおかげで、いろんな種類のお酒を取り扱うことには慣れていましたが、バーに関してはまったくの素人なので、取引しているお店や馴染みのバーに顔を出して、改めて内装を見せてもらったり、お店でお酒を出すときの原価について教えてもらったり、たくさん勉強させてもらいました。
お店のイメージは、あまり酒屋っぽくなく、むしろアパレルのお店のような内装にしたいとお願いしました。バーのお店が白、店舗が黒というテーマカラーになっています。リフォームの費用は当初、自分の中の見積りとしては600万円ほどでした。それが工事が進むうちにどんどんかさんでいってしまって(笑)バーをするにあたり、水まわりの工事をゼロからしたのが高かったのかなと思います。トイレを新たに作るために、床をいったんはがして、配管工事からしてもらっているので、トイレひとつ設置してもらうのも大変でした。バーの空間だけ床が高くなっているのは、床下に配管を新設したからなんです。
——なるほど。水まわりの工事は大掛かりな作業も含まれ、費用がかかってしまうと聞きました。
石榑さん:
そうですね。あとはバーで料理を出すために、IHの2口コンロが使えるキッチンスペースも作ってもらっています。また一つの空間だった場所を3つの空間にしてもらうなど、リフォームにかかったのは、トータルで1000万円を越えますでしょうか。コトスタイルのスタッフさんには「ぼったくりか〜」とツッコミを入れているんですが(笑)。でもまぁ、見積りに変更があったときは、そのたびに知らせてもらっているんですけどね。当初の予定からいろいろ変更があって費用は結構かかってしまいました。
——そうですか(笑)でも、もとは1つだったとは思えないくらい、それぞれがいい雰囲気の空間になっていますね。
石榑さん:
ありがとうございます。バーと店舗を隔てる壁は、向こう側が見えるようにと窓をつけてもらいました。窓枠にはアイアン塗料を塗ってもらっています。
——窓枠、本物の鉄のようですが塗料なんですね! あちらの空間が見えると視界が遮られないので、広がりも感じられます。ボトルが並んでいるのを眺めつつ、お酒が飲めるのはお酒好きの人にはたまらないでしょうね。
石榑さん:
バーでは基本的に店舗で取り扱っているウィスキーを出しているので、バーで飲んで味が気に入ったら隣りの店舗でそのまま購入して持ち帰っていただくこともできます。実際「飲んでおいしかったから」と言って購入される方もいらっしゃいますね。バーのチャージ料は取っていないので、気軽にいろんなウィスキーが飲めるのもいいのかもしれません。
——バーを併設した店舗ということで、逆にお目当てのお酒を買ったあと1杯飲んでいこうというお客さまもいたりして、両方にいい効果がありそうですね。石榑さんが当初の予定に縛られることなく、空間に合わせて発想されたことは素晴らしいなと思いました。次回は、お酒のボトルが並ぶ店舗部分のリフォームについて伺います。