コトスタイルで施工なさったお客さまに、
お話しを伺ってきました。
京都、洛北の名刹・金閣寺から、すこし南へ…
京町家が並ぶ一角がありました。
「ISO茶房」と記された看板がなければ、見過ごして
しまうほど、控えめな外観。
そこから格子戸を開け、一歩足を踏み入れると…美しく、
落ち着いたインテリアの中に、かぐわしい茶葉の香りが
漂う、不思議な素敵な空間が広がっていました。
オーナーの磯尾さまに、お話を伺いました。
その数600個以上、美しく均整のとれたフォルムや、
動物を模した愛らしいカタチの急須を眺め「気づいたら
集まっていまして…」と穏やかな表情で話すオーナーの
磯尾さん。
高級茶藝師、高級評茶員という、茶に携わる場合、中国
では必須、難関と言われる2つの資格を保有されています。
インタビュアー:
ところで…茶藝師、評茶員って、どんな資格なのですか?
オーナー様:
はい、茶藝師は中国の国家資格で、これがなければ中国
ではお茶に関する茶館やホテルなど正式な茶芸業務に
つけない、働けないと言われ、中国国内では、茶の仕事に
携わる場合の必須資格と言えます。
お茶業務を希望する中国の人は茶館などで修行しつつ
取得する人も多いです。
いっぽう、評茶員は、茶葉の品質評価をする人が保有する
資格です。
中国茶の評価方法にはきちんとした評価の基準があって、
茶葉の①外観②水色③香り④味⑤茶殻、この5つを総合評価
して、A、B、C、それ以外、と茶葉のランクを判定評価していきます。
中国茶を評茶すると同じ産地、茶園で作られたものでも、その
年によって出来具合が違ったり、茶葉の採取が「機械摘み
なのか、手摘みなのか」わかりますし、評茶の名人クラスに
よれば限られた品種の中でですが、その評茶した茶葉が
どこの茶園で誰が作ったのか?なんて由来までわかったりします
インタビュアー:
ええ〜そうなんですね。さすが、数千年の歴史の中で、
お茶への文化を築き上げてきたお国柄です。
オーナー様:
はい、中国茶は、ざっと見積もっただけでも、緑茶、青茶(ウーロン茶)
白茶、黄茶、紅茶、黒茶、花茶で1,000以上あるといわれ、一生かけて
も飲みきれないほどの種類があると言われますから、私も日々、勉強の
途上ですよ(笑)
インタビュアー:
中国茶に魅せられたのは、10数年前、半導体メーカーの
技術職に在ったとき。
出張で訪れた台湾で、ある「急須」と出会ったのが、きっかけ
だったそうですね。
オーナー様:
一目惚れに近いかもしれません(笑)いまは600を超える
茶器のコレクションの最初の1個が、持ち手に「龍」が形どられた、
この急須なんです。
中国茶は、小さな茶器で、何杯もいただきます。
最初に入れた茶葉に、お湯を注しては何煎も飲むので、だから、
急須の出番が多いんですよ。
最初、中国茶の店を開きたいなあ、と思ったとき、まだ、具体的に
「ドコで」とまで考えられなくて、色々なところで、いくつか物件も
見たんです。
最終的に札幌と、京都と、どちらにしよう、と迷った際、この京町家に
出会って。
急須と同様、これも一目惚れ、気づいたら即断していました。
京都市内の物件だけでも5、6軒回り、「ピンとこないなあ…」と感じて
いた磯尾さんを即決させたのは、この町家の天井近くを横切る、
美しい大きな梁。
もとは、西陣の織元さんが住まいしていたという町家は「築80年」を
経てなお、しっかりした骨組みだったそう。
頼もしく鎮座している梁に、魅せられたオーナー。
インタビュアー:
開店までの準備期間中、高級茶芸師と高級評茶員の資格所得の
ため、中国の杭州で2週間近く日本を離れていたとのことですが、
打ち合わせなどで、不自由はなかったのでしょうか?
オーナー様:
はい、中国滞在中は既に工事も終盤にさしかかり、連絡はメールしか
使えず、なかなか細かい打ち合わせが行えませんので送られてくる
進捗写真を見ながら私の要望をメールで深夜に送っておりました。
内装の細かい点につきましては担当の池田さんにお任せいたしました。
あと、実はコトスタイルさんと、もう1社とで相見積もりをとっていた
んです。
コトスタイルさんにしようと思った理由は、私の漠然としたイメージを
ちゃんと形にしてくれていたこと、料金面で納得ができたこと、
の2つですね。
あ、そうそう忘れてはいけないのが…「庭」の設計かな。
見て下さい、この庭石も全部、もともとあったものを全部生かして
いるんです。なかなかいい感じでしょう?
湯を注しながら何煎も楽しめる、中国茶ならではのゆったりとした
時間を過ごしてもらえるように…そのイメージだけはあったものの、
当初、インテリアについて、具体的に固まっていなかったのです。
それが、池田さんのおかげで、どんどん店作りが進んでいくのは、
楽しかったですよ。
インタビュアー:
お店のインテリアで気に入っていらっしゃるところは?
オーナー様:
1階と2階のライトを、あえて揃えずに変えたところかな?
これも担当の池田さんのアイデアです。
1階のライトは、アンティークのガラス傘を、2階には竹細工
のライトカバーをつけています。
ほら、ココ(茶芸台)から見たとき、2つの、違う照明がともって
いるのがすごくアクセントになるでしょう?
あと、バリアフリーにも、ちゃんと対応しているんです。
京町屋の通り庭(土間)から店内、厨房からトイレ、最奥の
庭まで、車椅子で移動いただけますよ。
ただ玄関だけは構造上段差が解消できなかっただけで、
そのため段差解消スロープを使用します。
「新しい面」だけでなく、建具として古いガラス障子
もそのまま残して使っていたりします。
コトスタイルさんいわく「古いガラス戸や建具は、当時の職人
さんがいないので、もう作りたくても生産することができない」
らしいので。
インタビュアー:
なるほど、新しく快適なところと、「古さを積極的に活かす」
ところと…両方が自然に馴染み、インテリアとして同居している
ところが、ISO茶房さん全体の魅力になっているのでしょうね。
オーナー様:
はい、金閣寺からも徒歩で数分ちょっとと近く、散策にもいい
ところにありますので、ぜひ、観光の帰りに、ゆっくり中国茶で
いただきたいですね。
おススメの茶葉も仕入れ状況や季節によっても違いますし、
手作りのデザート(※)と一緒にで楽しんでいただければ…。
格子戸を開け、中に入った途端に「流れる空気が違う」そう感じる
のは、新と旧がコラボした落ち着いたインテリアのせいなのか、
それとも、オーナーの磯尾さんの魅力なのか…
店内にほのかにただよう「お茶」の香りに癒されつつ、ISO茶房さん
を後にしました。
オーナーの磯尾さま、どうもありがとうございました!
(※)磯尾さんのハンドメイドによる「中国茶シロップの杏仁豆腐」
「烏龍茶のシフォンケーキ」は…垂涎ものですよ!