2022年4月に地下鉄丸太町駅すぐに開院した「こしばクリニック」。前回は、開業までのいきさつや、コトスタイルに依頼されたきっかけについてお話を伺いました。今回は、リノベーションについてさらに詳しくお聞きします。
細かいところまで
しっかり希望を聞いてくれました
——リノベーションにあたって、小芝さんからはどんな希望を出されたのですか?
小芝さん:
メインの診察室に超音波診断装置(エコー)を置きたいというような医療機器の種類や配置ですとか、患者さん用の廊下・導線とスタッフ用の廊下・導線をそれぞれ別個にとることといったイメージを伝えました。物件が奥に細長いものだったので、だいぶん知恵を絞っていただいたと思います。
——2つの診察室にさまざまな機器が設置されていますが、窮屈なかんじはしないですね。L字型の受付カウンターも使い勝手がよさそうです。待合室もすっきり広々としています。
小芝さん:
クリニックは一定以上の幅の廊下を確保するなど、行政上さまざまな規定があります。コロナ禍にも対応できるように待合室では患者さん同士の距離を取りたかったですし、発熱した患者さんが来られた際は、完全隔離まではできなくとも受付や診察室に入る前に検査ができるスペースも欲しかったので、間取りはかなり時間をかけて考えました。
最適な間取りにたどり着くまで、何度も話し合って調整を繰り返しましたね。実は、当初はレントゲン室も設けるつもりだったのですが、施工が始まる直前になくすことにしたんです。
——それは大きな決断でしたね!
小芝さん:
私の、というか、脳神経内科の診察ではレントゲンの必要性は低いので、最終的には診察室を広くすることを優先しました。
医療機器はほぼ全てLANで繋がっていて、診察の際に電子カルテからすぐ参照できるようなシステムを導入しています。
医療機器を増やすごとにLAN配線はもちろん、電源やコンセントの確保も必要になりますし、メーカーごとにどの程度の電源が必要か、テナント全体のMAXを超えていないか、
コトスタイルさんには都度確認してもらっていました。かなり大変だったと思います。
——さまざまな医療機器を備えた本格的なクリニックでありながら、院内はどこか温かみも感じます。
小芝さん:
コトスタイルさんから「おうちに帰ってきた時のような安心感のある空間」をテーマに提案していただきました。
病院にありがちな無機質な空間にはならないよう、例えば、待合室と診察室で照明の色温度を変えること、待合室は優しい色の照明で患者さんに安心感を持ってもらい、診察室では顔色を判断しやすいように黄味を減らしつつ冷たい印象にならない色合いの照明を使っています。診察室の照明は、エコー診断の際にすぐに照明を落とせるよう、手元にダイヤル式の調光器を配置してもらいました。これは瞳孔などを見るときにも重宝しています。細かいところまでよく気が付くなと感心しましたね。
——お手元というと、先ほどから気になっていたのですが、診察室のテーブルにマイクとミキサーが置いてありますね。
小芝さん:
気づかれましたか(笑)。マイクは患者さんをお呼びするときに使うものです。ミキサーは、院内でかける音楽と患者さんへのアナウンスを同時に流すことができるように置いたんです。これもずいぶんコトスタイルさんとアイデアを出し合って工夫しました。アンプとスピーカーのシステムはBOSEのものなんですよ。
——こだわりが詰まっていますね!
小芝さん:
手作り感のあるいい内装になったと思っています。コトスタイルさんは、床や壁の色に至るまで、こと細かに希望を確認してくださいました。開業直前まで勤務医として働いていましたし、タイトなスケジュールの中で決めていくのは大変ではあったのですが、「一生のうちで、施主になって床の色まで真剣に悩むことなんてそうないでしょう」と知人の建築士から言われて、たしかにそうだなと(笑)。納得がいくまで一緒に考えられので、お願いして本当に良かったです。
——開業されての手ごたえはいかがですか。
小芝さん:
インターネットで当院を見つけて診察に来てくださる患者さんが増えています。中高年の方はもちろん、10代、20代の若い方が調べて気になることを相談に来てくれるのがうれしいですね。「開業してよかった」と日々感じています。日常のケアが必要な疾患をしっかり管理し、重大な症状が疑われれば信頼できる病院と遅滞なく連携する、そんな「街のかかりつけ医」としてこれからも頑張りたいです。
——当初の理想とされていた「気軽に相談できる場所」が実現したのですね。これからも、街の皆さんに頼られる存在になりそうです。
小芝さん、本日は貴重なお話をありがとうございました!